一九三二年笠戸船渠株式会社笠戸造船所が江の浦に設立され、同地区の人口増加に対応して翌年四月、深浦小学校江の浦分教場を設置した。五二年には児童数も江の浦地区二七九人、深浦地区二一〇人と本校をしのぐ状態となったので、分教場に二階建校舎を増築して独立校とし、江の浦小学校と改称した。
　戦後のベビーブームによる教室増築の必要や小学校の老朽危険校舎の解消をふまえ、さらに教育の効率を高めるため、市は適正規模校への改編を重要課題として、これを総合的・合理的・経済的・計画的に解決するため、一九五三年八月に画期的な「下松市中・小学校統合整備計画」を策定した。その概要はつぎのとおりである。
　すなわち、児童生徒数が最大に達すると予想される五六年度を一応の目途として、学校施設・環境の全体的抜本的な改善を行う。とくに学校の管理・運営や教科指導・生徒指導・クラブ活動・校内研修等に適切な職員構成を有する学校規模にする。また中学校は他所に校地を求めて移転し、残された施設を小学校に移管して整備し、学級増対策・老朽危険校舎の解消に役立てる。児童生徒急増のピークとなる五六年度における必要な教室に対し、不足数は次のように推計される。
　中学校－一般教室七、特別教室九
　小学校－一般教室二七、特別教室一四
　さらに全小学校の校舎総面積は二万一〇四五平方メートルで、うち老朽危険校舎の面積は五五三一平方メートルに及び約二六パーセントにあたる。これらの校舎の解消を図っていく。
　このような整備方針に基づいて具体的な整備計画がたてられ、これに要する経費は約二億一〇〇〇万円の巨費に達し、市の財政規模五億六〇〇〇万円の当時では非常な重荷であった。それにもかかわらず、つぎのように整備は積極的に推進され実現をみるに至った。
　まず下松第一中学校の移転。古川町(現在地)に約三万三〇〇〇平方メートルの校地を造成して校舎の建築にかかり、五四年一月に第一期工事が完了した。その後、校舎の増築に伴って生徒を順次に移動し、翌年七月に全生徒を収容した。
　つぎに下松第三中学校と下松第四中学校の統合。当時、第三中学校は九学級、第四中学校は八学級の小規模校であり、両校を統合して適正規模の中学校を設立することになった。このため、市と市教育委員会は各地区懇談会を開催して統合の趣旨徹底を図り、地域住民も協力的で、計画は順調に進行した。両校のPTAを中心に新校地選定委員会が設けられ検討の結果、両校の中間にあたる花岡、下高塚に決定した。市はこれに基づいて約二万四八〇〇平方メートルの学校用地を造成し、五五年三月に新校舎が落成して両校の生徒を収容した。翌四月新入生を迎え、一六学級編成の末武中学校が新しく発足した。

新設統合した末武中学校

　この三中・四中の統合によって、従来の数詞による中学校名をそれぞれ地名をとって、下松・久保・末武・深浦の中学校に改めた。
　さらに花岡小学校の移転。花岡小学校の校舎も老朽化してきたので、統合後の旧第四中学校校舎に移転することにして、全面的な増改築を行い、五六年九月に竣工して全児童が新校舎に移った。これに伴い、旧花岡小学校校舎を解体して大運動場とし、その間にあった小川を暗渠にして新校舎と運動場を結び、現在の花岡小学校の形態がつくられた。
　整備計画四カ年の期間において、その他の学校では、久保・公集・豊井・深浦の小学校の講堂建設、久保・豊井小学校の校舎増築、笠戸・久保両小学校の運動場拡張など施設の拡充が行われた。
　ところが不幸にして学校火災があいつぎ、五一年一月、下松第四中学校が失火により本館(旧青年学校校舎)五四九平方メートル・花岡小学校校舎二〇五平方メートル計七五四平方メートルを焼失した。同年十二月には公集小学校が外部からの原因により四四三平方メートルを焼失、五三年九月、下松第五中学校が隣家出火の類焼で五六〇平方メートルを焼失、また翌年十二月、下松小学校が漏電による失火で本館一一〇〇平方メートルを焼失するなど、大きな災害に見舞われた。