このような熱意がさらに発展して一九五〇年四月に新教育の共同研修、下松教育の新たな創造をめざし、下松市小学校教員研修会、下松市中学校教員研修会が結成され、教師自体による全市的研修体制が確立された。その後、養護教員・事務職員を加え、七三年五月に下松市小学校教職員研修会、翌年五月には下松市中学校教職員研修会とそれぞれ改称した。
五二年十一月に市教育委員会が発足すると、本市学校教育の現状を分析検討し、また世論の戦後教育への批判を勘案して、教育の本質を追究していく基本姿勢のもとで 基礎学力の増強、生活指導の徹底、健康教育の推進を重点目標に掲げた。そして、これらに関する課題の研究や実践は、市教育委員会・市教育研究所・市小・中学校教員研修会が一体となって取り組み、進展する時代に敏感に対応しながら改善・深化に努めてきた。
本市の学校教育は、戦後の新教育の理念を基調とし、児童生徒の自発的、創造的学習を通じて、発展する未来社会に対応する「学びとり」の姿勢を確立することを目標とし、その研究・実践に不断の努力を傾けてきた。したがって本市教育の目標とする基礎学力は、単に基礎的知識・技能の伝達・習熟をはかるのみでなく、学習の過程において思考・観察・推理・洞察・創造・鑑賞等の精神的諸能力を啓発し、生きて働く学力の育成を志向するものであった。
六一年、市教育委員会はこれまでの研究・実践の成果をふまえ、さらにその深化・充実をはかるため「下松市指導研修要項」を作成し、学習基盤三項目(学習遂行条件の改善、児童生徒を取りまく人間関係の調和、学習内容の構造と環境構成)と学習指導四原理(自立化-自発的主体的学習の態度能力の啓発、社会化-協同学習・集団思考の訓練・個別化-取りこぼしのない応能指導、能率化-学習の評価による効率的な指導)を提示し、学習指導刷新の指針とした。
六四年からは、前述の学習指導の方針を基盤とし、発展する未来社会に応じる「学びとりの姿勢の形成」に焦点を置いて積極的に推進した。
六六年には、教育の現代化「学びとり」の姿勢を形成するための生涯学習の立場から、指導方針の再検討を行い、学校教育・社会教育を通じて人間能力の開発、人間性の向上、主体的人間の育成を共通の教育目標とし、社学一体の教育体制の確立を図った。学校教育においては学習指導の構造的研究を進め、目標の焦点化、教材の構造化、学習課題の意識化を内容とする課題解決的学習の研究実践を行ってきた。
七〇年十一月、戦後二五年間にわたる本市教育について、広く批判指導をあおぐ研究発表の計画に対し、県教育委員会からも積極的に支援がよせられ、県教育委員会・市教育委員会・市小・中学校教職員研修会共同主催のもとに、未来を開く課題解決的学習の創造を研究主題とする下松教育研究発表大会を開催した。県内外から一二五〇名の参加を得て熱心な研究討議が行われ、多くの示唆を与えられ、今後の教育実践の推進に大きな励みとなった。
下松教育研究発表大会
その後も「学びとり」の姿勢の形成を基盤として、七六年から「確かな学力を育てる学習指導の改善」、八一年からは、分かる授業の組織化を志向して「学習意欲を高め基礎的、基本的事項の習熟を図る授業の改善」を共通の研究課題とし、学習意欲の高揚、基礎的、基本的知識・技能の定着到達度の評価、学習の仕方に重点をおいて研究実践を行った。また八六年には、これまでの研究成果を基盤に、時代の要請をふまえて、国際化の教育、自己教育力の育成、心情の陶治を目指し、新たに「自ら学ぶ力を育て、たくましく生きる心豊かな教育の創造」を共通の研究課題に設定し、精力的に研究実践を進めている。