市政の長期基本路線を策定するため、一九六七年七月下松市総合建設計画協議会が開催された。その分科会の社会教育部会において、市民の理想とし目標とすべき人間像・都市像を表徴する市民憲章制定の要望が出された。山中市長はかねてから市民憲章に深い関心をよせていたので早速市教育委員会を通じて社会教育委員会に諮問し、その検討・推進を委託した。社会教育委員会はこれに基づいて市民憲章制定に関する調査研究を進め、六九年に至って、秋の市制施行三十周年記念式典を目途に実現することを決定した。
たまたま委員の選出母体の一つであった下松青年会議所から、市民憲章制定は活動方針にかかげている社会開発に通じるので市民憲章実現のための調査・促進の事務と経費一切を引き受けたいとの要望が出された。社会教育委員会もその熱意と行動力を期待して、青年会議所に付託し、積極的に支援、協力することを決めた。
下松青年会議所では早速市民憲章制定の準備活動に入り、市民憲章の制定に総力を結集しようというパンフレットを作成、配布し、全国の都市市民憲章の検討、市民憲章策定に関する市民アンケートの実施等を行い、世論の喚起と資料の収集・整理に当たった。さらに推進活動の全市的な組織化をはかり、六月に各種団体の代表・有識者に参加を求め、市民憲章制定準備委員会を開催した。協議の結果、推進を具体化するため、準備委員会を市民憲章促進協議会に切り替え、あわせて組織・広報・起草の三専門委員会を設けて推進体制の強化を図った。九月に市民憲章の草案が作成され、促進協議会と社会教育委員会の承認を得たので、市長に対し市民憲章制定の提言書を提出して請願を行った。同時に制定後の実践活動に備えて促進協議会を市民憲章推進協議会に改めた。
市においては、十月下松市議会臨時会を開いて市民憲章の議案を上程可決し、次いで十一月三日に挙行された市制施行三十周年記念式典において市民憲章制定の宣言を行った。
下松市民憲章
わたくしたちは、市制三十周年をむかえるにあたり、先輩の業績をしのびながら、心を新たにし、市民性の向上とおたがいのしあわせを求め、市勢躍進をねがい、ここに総意を結集して、市民憲章を定める。
わたくしたち下松市民は、英知と友愛と勇気をもって
きまりを守り、明るいまちをつくる。
花と緑を愛し、美しいまちをつくる。
スポーツに親しみ、健やかなまちをつくる。
生産に励み、豊かなまちをつくる。
若い力を育て、伸びゆくまちをつくる。
註 生産は、精神的生産=文化と物質的生産=産業の両面の意をもつものである。