9 おさんヶ浴(おさんがえき) (下松地区)

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 下松市と光市の境にある「大谷山(おおたにやま)」に伝わる話である。寺迫(てらさこ)の松ヶ坪(まつがつぼ)から茶臼山(ちゃうすやま)へ行く途中に、きつねの穴があり、そこに「おさん」というきつねがすみついていた。
 この「おさんぎつね」が、恋ヶ浜(こいがはま)の王子ヶ森(おうじがもり)のあたりに、器量のよい女に化けては出ていた。田んぼ道に隠れていては、そこを通りかかる人をだましたり、夜中に通る人を青白い光を出しては驚かしたりして、まわりの人達を困らせていた。
 そこで、「とうじ屋」という醬油屋(しょうゆや)の「力(りき)」という男が犬を連れて行き、このきつねを捕えて殺してしまった。ところが、その力(りき)が風呂へ行き、原因もわからぬままその中で死んでしまったそうだ。
 近所の人達は、これは恐らく「おさんぎつね」のたたりだろうと、こわごわとうわさをし合っていたということである。その後、恋ヶ浜の王子ヶ森のあたりを「おさんヶ浴」といわれるようになった。