このお地蔵様は、別名「火除けのお地蔵さま(ひよけのおじぞうさま)」ともいう。遠いむかし、日尾山麓の梁(やな)におまつりしてあったと伝えられているが、元禄十六年(一七〇三)の古今未曽有(ここんみぞう)の大洪水(こうずい)で山津波が出て、そこにあった雄滝(おたき)、雌滝(めたき)という二つの大きな滝がくずれた時流されて西市に漂着した。そこで、村人は今の西市児童公園の所にお堂を建てて懇(ねんご)ろにおまつりをしていたが、明治三十六年(一九〇三)の大暴風雨でそのお堂が倒れたので、現在の正福寺の薬師堂に安置したという。
この地蔵尊は、むかし西市を火災から守られたので「火除けの地蔵さま」ともいう。また、日照りの時には、「雨乞い」といって、農家の人たちは、「みの笠」でこの地蔵さまをかつぎ、海岸に運んで行き、海の潮をかけたという。そうすると必ず霊験(れいげん)があらわれて雨が降ったといい伝えられている。