むかし、むかし、平田川ぞいの花岡道が、かやにおおわれて寂しい道であったころ今の工業高校のあたりに悪い狐がいたそうである。お嫁入りやお祝いごとのあった深夜、おみやげのごちそうを持って通りかかると、急に醉いが出て、水が飲みたくなるそうである。「ああ、水がほしいなあ。」と思うと、目の前に茶びんがある。「やれありがたや、水を飲もうかい。」と手をのばすと、その茶びんがころころところげていく。あれあれと醉ったまぎれに、おみやげを置いて茶びんを追いかけると、いつの間にかフッと茶びんが消えてしまい、やれやれと醉いもさめて、みやげに気がつき、あともどりをしてみると、おみやげのごちそうは、みんなきつねにとられていたということである。