36 山の婆の岩(やまんばあのいわ) (米川地区)

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 それは遠いとおいむかしのことでした。山の奥の奥に、ものすごい力持ちの、お婆さんが住んでおりました。そのお婆さんがある日のこと、とてつもない大きな石にひもをかけて、背中におぶって山からくだってきました。ところが、足をふみそこねて、おぶっていた大きな石もろとも、川の中へころがり落ちてしまいました。その時、胸をひどく打って、どうしても動けなくなってしまいました。何とかして立ちあがろうとしましたが、どうしても立ちあがることができず、まっ黒い血を吐いて死んでしまったそうです。
 それで、大きな岩はそのまますわってしまいました。その岩に、婆さんがかけたひもあとが、白いすじとして残り、吐いた血しおがまっ黒く、岩はだにしみこんで残りました。
 この岩は、すばらしく大きな岩であったため、動かすこともできずそのまま川の中に、すわってしまいました。里人はこの岩を、「山の婆の岩」と呼んでおります。
 これは、米川の「瀧の口」にあった、大きな岩にまつわるはなしです。