あまり、ぐっすりと眠ってしまったので、いつの間にかくもがやってきて、五郎の足から、身体にかけて、ぐるぐるとくものいとをまきつけてしまいました。そのために、五郎は目がさめて起きようとしましたが、くものいとのために動くことができなくなりました。これは大変だと思い、何とかしてくものいとを破り動こうとしましたが、だんだんとずれて、とうとう滝の中へころがり落ちてしまいました。
くものいとで手や足が自由に動かなくなった五郎は、とうとう淵深くへ沈んでしまい、はい上ることもできずに死んでしまったのです。かわいそうな五郎きこりでした。そこで里人は、五郎をあわれんで、この淵を「五郎淵」(ごろんぶち)とも、「くも淵」とも呼ぶことにしました。またこの淵に落ちこむ滝を、白くもの滝と呼んでおります。
この滝は、雨乞いでも有名です。ながいながい日照りが続いて、水が足りなくなると、この近くの人々は、総出で、淵の水を汲み出して滝つぼをからっぽにし、その滝つぼで火を盛んにたいて、煙をどんどん出すと、かならず雨が降り出したといい伝えられております。また、この淵の深さは、滝の高さと同じほどであったといい伝えられております。