大むかし、笠戸島の本浦の浜で、子どもが泳いでいたところ、大きな蛸がでてきて、海に引きづりこまれ、食べられてしまいました。
この浜の漁師たちは、大変困り、何とかして、この大蛸を捕えたいものと思い、みんなで力を合わせて、大きくて丈夫な網を作り、海に入れました。しかし、蛸もすばしこくてなかなかつかまりません。やっとのことで生け取りにして、浜へ引き上げられました。見ると、化物のように大きく、早速このにくい蛸を切り刻んで、食べようということになりましたが、どんな刃物をもっていっても、刃が立たず、この蛸は、神様のお使いではないだろうかということになりました。
だがやっとのことで、八本の足の内、一本だけを切り取って、みんなでかついで山の上に持って行き、穴を堀ってうめ、その上に石を立て、蛸神さまとして祭りました。
この神様は、その後風邪(かぜ)にご利益(りやく)があるということで、地元の人々は、藁(わら)で馬人形をつくり、お参りをすると、必ず効き目があったといわれております。