笠戸島に、深淵という小さな集落がある。この集落の中ほどに、松の木の生い茂った森があり、この深淵の森の木を切ると、たたりがあると恐れられ、切る人もなく困っていた。
ある時、「船隠し」にある観音さまを、森に移したらという話が出て、御本尊である不思議な形の石を、持ちあげようとしたが、誰がやっても動かない。困ったあげく、「南の森の中へお祭りして上げます。」と、おことわりをいうと、なんなく持ち上がり、移すことができたという。それ以来、この「深淵の森」の木を切っても、たたることがなくなったと伝えられる。
今も観音様のお堂がここにある。