7 木綿引唄(もめんびきうた)

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○ 木綿引け引け 引かずにいねば  家の名がたつ 損がたつ
  木綿引け引け 引くでこそたまる  辛抱(しんぼう)すりゃこそ 金たまる
  木綿引け引け 車こうてやろうよ  盆にゃ雪駄(せった) こうて踊らせる
  木綿車は 引きゃこそまわる  引かでまわるは 水車
  木綿引きにきて 引きゃら だいにやれ やどの名がたつ 腹もたつ
  糸を引くなら むらなく細く  かわい殿御(とのご)の夏羽織(なつばおり)
  細く細くと いうてじゃけれど  糸は細らず 眼が細る
  かけてもろうた 十刄(もんめ)の篠(しの)も  しんしん尽さにゃ みてはせぬ
  おまえ一人か 連衆(つれしゅう)はないか  連は後から 駕籠(かご)で来る
 ※ 畑で作った綿を、農家の女は、夜鍋(よなべ)仕事に、糸車をまわして糸を紡(つむ)いだ。
   根気のいる辛い仕事を、少しでもやわらいだ気持ちでと、おたがい木綿車を持ち寄って、四・五人の娘さんたちで紡(つむ)ぐ姿もあった。
    夕食がすんで、暗い灯の下で、ビーンビーンと聞える紡ぎの音は、なにかもの悲しげに感じられた。この糸で、また、着物を織る機織り(はたおり)の仕事もあった。