2 門松飾り(かどまつかざり)

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 戦後国土緑化の一環として、松を切って立てると山々が荒廃(こうはい)して、災害が起こりやすくなる。門松を慎むよう政府に勧(すす)められたことを機に、年の瀬のいそがしさを省くため、絵にかいた門松が飾られるようになった。正月の風景の味けなさを感じるのは思い過ごしだろうか。松も近年は松食虫にて………
 今も当市の各事業所の門口の両側には、三本の太い竹を槍(やり)状に切り、松と梅を添えた門松が、十二月下旬になると立てられている。農・山・漁村では戦前のように門松の両側に棒材を打ち込み、松・竹・梅が縄で結びつけ 立ててある。笠戸では棒杭に割木がそえて使用されている。門松のある風景は何となく風情がある。門戸松は神々を迎えるため、門口を清浄にし入口を標示したもので、それに形以信仰が加えられたものと考えられる。
 松は「色替ぬ庭の松枝、常盤の松」と言い、何事も緑をあげ、繁茂し、長く栄える姿。竹の真直(まっすぐ)に節目(ふしめ)正しく伸び、風にも折れず、常にそれにしたがい、常に緑したたる姿、梅はきびしい寒波に耐えて花を開き、実を結ぶ姿にあやかりたいと門口に立て、新春を寿賀したものである。
 三日の夜、やすめる五日まで飾ってある家もあり、町方では小五月まで飾られているものをみる。

 

 (資料) 門松餝藁(かどまつかざりわら)
 △元日ヨリ十五日マデ門ノ左右ニ松一本ヅツニ、竹一本ヲ添テ立、其上ニ竹ヲ横タヘ藁ヲ付是ニカサル品々
  ○穂長(ほなが) シダ ウラシロ モロモキト云 夫婦相生ノ茂ニトル
  ○楪(ゆずりは)  親子草トモ云 子孫相譲(ゆず)リテ長久ヲ祝ス
  ○昆布 ○炭 ○橙(だいだい) ○蜜柑 ○柑子(かうじ) ○柚(ゆず) ○橘 ○穂俵(ほんだわら) ○海老(えび) ○串柿(くしがき)
  ○大根 ○株菜
  ○神代人皆□居ノ時、其食スル物ヲホニ竹ヲワタシテ、カケ置タル余風ト云
 △懸鯛(かけだい)ヲニラミ鯛ト云事ハ、諸々(もろもろ)ノ邪神ヲ避ニラムト云事ナリ
  松ハ千年ヲ契リ、竹は万代ヲ契ル者ナレハ、年ノ始ニ祝ヒ立ル事
 △禁中 院中 摂関 堂上方門松シメ餝(かざり)ナドナシ、是ハ平日不浄ヲ入ラルル事ナキ故シ
 △民家ハ常ニ不浄ヲ触ル事多シ、年ノ始神神ヲ祭故門戸ヲアラタニスル茂ナリ
  ○注連縄(しめなわ)ハイマシメナリ
  ○藁縄ハ直クスグナルヲ祝ス