筆者の家では、初日の出に鶴と三河万才の三幅対が、古くから掛けられる慣習になっている。
床の間の中央に「重ね餅」が飾られ、一般に「お鏡」といっている。三方の上に紙を敷き、ウラジロ・ユズリ葉各二枚・重ね餅・橙(だいだい)・昆布・のし・干柿(ほしがき)等を置いてある。家により少々違っている。これは神棚、祖先をまつる佛壇にも供える。
輪かざりは家の門口(かどぐち)(玄関)床の間・神棚・竈戸(かまど)・井戸・仕事場・佛壇・祖先の墓地・車等その家にとって大切な所に、神々のお出でをいただき、年中の守りと恵みをお与えくださるようにと飾っている。近年簡素化され、門口に大きな立派なものを掲げて、一括している家庭もある。高価になったことと、自家で作ることがむつかしくなったためであろうか。正月三が日は神々(床の間、神棚等)仏壇には毎朝、食前に必ずお膳が供えられる。内容は家によりかなり違っている。ユズリ葉の上に小さな円餅(まるもち)を重ね、雑煮の大根・いりこ・小豆・黒まめ・煮しめ(昆布・子芋・人参・ごぼう・蓮根)・かち栗・神酒・お米・お福茶等でこれを朝・昼に分けて供える家庭や、朝一度供える家庭もある。品々の名称は何れも「祝語」である。
(資料) 歳徳(としとくの)棚(恵方棚トモ云)
其年ノ吉兆ノ方ヲ恵方ト申、家毎其方ニ向イテ高ク棚ヲ吊、供物、燈火ヲ献シ神ヲ祭ル凡新年神参リ萬事此恵方ヨリ始メル。
口祝(くちいわい)(蓬莱台(ほうらいだい)トモ云)
新年家々ニ三方ニシタ譲葉(ゆずりは)ヲシキ米ヲモリ。海老(えび)・慰斗(のし)・昆布(こんぶ)・榧(かや)・搗栗(かちくり)・橙(だいだい)・柑子(こうじ)・橘(たちばな)・蜜柑(みかん)・穂俵(ほんだわら)・田作(たづくり)(すぼしにした「ひしこ」)トコロ・梅干ノ類・何レモ皆祝語ナリ、
右ノ品、水陸ノ果、朝其侭用ユル事、上古ノ風儀ナリ