4 屠蘇・お福茶・雑煮(とそ・おふくちゃ・ぞうに)

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 元日の朝、お福茶をのみ、一家揃うて神々を拝し、屠蘇をいただき、「おめでとう」と互礼する。古くはここで主人の挨拶があり、場所を台所にうつして、揃って雑煮をいただく、幼い時は自分の歳(とし)ほど餅を食べるよう勧(すす)められたことを思いだす。
 「屠蘇」の処方は中国から伝えられたもので、一説によれば「蘇」は悪鬼の名、「屠」は切り割(さ)くこと。つまり「屠蘇」は一年中の邪気(じゃき)を払い、齢(よわい)をのばす「霊薬(れいやく)」であるといわれている。白求(びゃくじゅつ)(おけら) 桔梗(ききょう)・山椒(さんしょう)・防風(ぼうふう)・肉桂(にくけい)・大黄(だいおう)・赤小豆(せきしょうず)と調合して酒に入れて飲むもの。わが国では弘仁年中(八一〇―八二三)から起り、朝廷を始め、民間一般が歳旦(さいたん)の佳儀に用いる。当地では酒に味醂(みりん)を入れたり、市販(しはん)の屠蘇の元を味醂・酒でとき子供でも口にしやすいように作る。今年一年間病気しないための万病よけであるといわれている。
 (資料) 供御薬(みくすり) 是ハ元三(がんざん)トモニ供ス
 ○御薬ハ「屠蘇ナリ、施薬院典薬頭(くすりのかみ)ヨリ奉ル。陪膳女官(ばいぜんにょかん)、屠蘇ヲ酒ニ入レテ奉ル。天子銀器ニテキコシメス。
 ○五十二代嵯峨天皇ヨリ始ル、是ヲ呑メバ一家ニ病ナシト云目出度効能アル故年ノ始ニ之ヲ奉ル、唯今家々ノ屠蘇モ是ヨリ始ル、禁中御式ハ中々六ケ敷御事。
 「お福茶」お茶に梅干を入れたもので、慶事には昆布茶や桜湯を用いている習慣がある。これはお茶を弔事(ちょうじ)のときに使うという縁起をかついだわけである。梅干を入れたのはその薬料と形が赤き「真心」を現したものを飲むということであろう。
 「雑煮」は家によってさまざまである。イリコ・昆布のだしに大根を入れ(大根のほかにいろいろなものを入れる家もある)丸い小餅を入れ、醬油や味噌で味をつけ、煮こむ家、醬油で味をつけ、すまし汁にし、餅を焼き、その上にかけていただく家等大変多様である。
 (資料)雑煮、所々ノ故実ナラハシ有テ、其品々一様ナラズ、是モ上古ノ余風ナリ。
  膳ニモロモキ(ウラジロ)ユズリハヲ敷
 ○餅ノ上盛ハ、鮑(あわび)・昆布(こんぶ)・煎海鼠(いりなまこ)・牛蒡(ごぼう)・カブナ・大根・鯣(するめ)・里イモナドヲ加ヘ煮テ年徳神其外神々ヘモ備、家内モ祝フ事、是我国ノ風俗ニテ目出度事
  国々所々家々ノ風儀ニテ正月ノ儀式ハ色々替ル事。
 ○京都ナドニテハ大キナル頭芋ニ餅一ツ入、昆布斗向(とむこお)ニニラミ鯛トテ、小鯛ニイハ志ヲ添エ器ニモル、大根ノクキヲ小四ニ付ル、先右ノ大キナル頭芋ハノケ置、餅ヲ沢山ニモル、右ノ頭芋ハ色々ニ致□ル事
 ○箸ハ大キク削タルヲ。フト箸ト云テ用ユ、年ノ初ニ箸ノ折レルヲ嫌フ故ナリ。
 正月早々、切ることを忌み、雑煮の材料など、すべて庖丁(ほうちょう)を使うようなものは前夜に切り、当日は刃物で物を「切る」ようなことをしない家もある。