16 えびす講(こう)(夷(えびす)・戎(えびす)・恵美須(えびす)・恵美寿(えびす)・蛙子(えびす))

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 人びとが集まって「えびす神」(大国主神の御子神―事代主神(ことしろぬしのかみ)、漁業・商業・農業の祖神)を拝する行事である。講中の人が、その神徳を仰ぎ、感謝し、その御霊験をいただいて、漁業者は豊漁を、商業者は商売繁盛を、農家は五穀の豊穣を併せて家内の安全を祈念している。
 古い家の神棚には必ず、えびす、大黒の神像があるのをみても、当地方における、えびす信仰の深さを知ることができる。
 毎年、一月十日や、八月二十日(旧暦の場合もある)笠戸島の漁業を営む者が集まり、盛大な祭事が行われている。町方では一月十日や、十二月二十日(旧暦の地区もある)下松町中・大海町・花岡で、商家の人により行われ、一月十日を「初えびす」といっている。
 古老の話しによると、花岡の商家の旦那(だんな)方が一月十日に集まり、えびす講を開いて酒宴を催し、最後に「ワッショイ、ワッショイ」の掛け声高らかに次年度の当屋まで祝っていったとか、まことにめでたいことである。

 

 (資料)
 居篭(いごもり)祭  摂津武庫郡西ノ宮 エビス社ナリ  正月九日
 ○神武天皇、長髄彦(ながすねひこ)ト戦イタマフ時、天軍矢尽タル時、椎根津彦(しいねずひこ)神類万ノ矢ヲ奉ル 又食尽タル時食ヲ奉ル其後、天皇問テ曰ク、汝ハイカナル神ゾ、椎根津彦神答テ曰ク
  吾ハ蛭子命(えびすのみこと)ナリ、ワレハ世ノ富ヲ司ル、則西宮大神ナリ(俗ニ恵比寿ト云)
  九日夜 蛭子命(えびすのみこと)、広田ノ社ニ神幸アリ、容(かたち)異ナル神様ユエ、人ノ見ル事ヲ忌ミタマフ仍テ市中村民門戸ヲ閉テ透間ヲフサギ物事静ニ一夜禁足シテ神祭ヲツトム、翌十日ハ早天ヨリ門戸ヲヒラキ社頭ニ参詣ス、売物・見世物数多クアリテ甚賑ヤカナリ則是ヲ十日ヱビスト云。
  誓文拂 商家の人がこの「えびす講」の日に酒宴を設けて、懇意の方、出入される得意を饗(きょう)応する。今は大安売りをする。これを誓文拂という。
  夷舞(えびすまい) 夷神の面を被り、その扮装(ふんそう)をして鯛釣の動作に擬する神事舞、笠戸島で奉納されていた神舞の中にあった。