17 寒餅搗(かんもちつき)

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 先人の長い経験から生まれた生活の知恵である。富士山頂の雪どけの水(金明水(きんめいすい))が幾年経ても腐敗しないように、大寒(一月二十日頃から立春の前日まで)の水は、他の時節に比べて腐りにくく長もちする。そこで大寒に入った一月の下旬頃の農閑期を選んで農家で餅搗きをする。
 餅は搗いた後、比較的早い時期に水の中につけ貯蔵し、朝食や間食に炊いたり、焼いたりして食べると、火を入れて米を炊くようではなく、手間も省かれ大変便利である。また、延べ餅にして乾かし、薄く切って置くと一年位は貯蔵ができ、子供の「お八つ」や非常用食糧になる。子供の「お八つ」用には延べ餅の中に赤砂糖や、きび等を入れたものも作っていた。
 食糧の豊かな現在、寒餅搗きは少なくなったが、今も米川・久保・花岡方面ではその姿を見る。