23 針供養(はりくよう)

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 本来婦人行事の日、今も洋裁、裁縫を営んでいる所では行われているが、一般にはその姿を見なくなった。これは現在、一般の家庭では裁縫することも少なく、洋裁にしても殆(ほとん)ど、技術者に仕立ててもらったり、既製服を身につける等、衣の面でも社会分化が大きく進んだためであろう。
 戦前、花岡高等小学校の補修科で、十七・八才の女生徒が、主として裁縫を学び、毎年二月八日に「針供養」を行っていたのを思い出す。針供養は、二月八日裁縫の業を休み、折れた針を集めて、淡島(あわしま)明神に納める行事、帯下(たいげ)を病む婦人が、淡島明神(あわしまみょうじん)を祈ると、あらたかな霊験があるといわれている。この日、神を崇(あが)めて謹慎(きんしん)し、豆腐を求めて、これに針を刺して供養(くよう)するのは、婦人のために尽くせる針を供養して、謹慎の意を淡島様に表わすためであるといわれている。地方によっては、十二月八日に行う所もある。