地蔵様は村の入口、町の角(かど)、田畑のすみ、峠(たお)の頂上、墓所の中などにあり。常にわれわれの生活の中に、とけこんでいる仏様である。
毎月の縁日は二十四日で、昔は農村では、地蔵講が催されたが、今は殆(ほとん)ど絶えている。地蔵尊は、釈迦入寂後(にゅうじゃくご)の無仏の世に、大道(人間界・地獄界・畜生界(ちくしょうかい)・餓鬼界(がきかい)・阿修羅界(あしゅらかい)天上界)の衆生(しゅじょう)を救うべく、比工形(びくぎょう)を現した菩薩(ぼさつ)で、道祖神の信仰や、子供が死んだあと、「賽(さい)の河原」で苦難するのを救うという説とも結びついて、子どもの守護化として、絶大に信仰されるようになった。今でも交通事故や、遭難死など不慮の死をとげた人の冥福(めいふく)を祈るために、地蔵菩薩像が建立されるのも、この信仰によるものである。
地蔵尊像には、子安(こやす)地蔵・身替(みがわり)地蔵・延命(えんめい)地蔵・今では水子(みずこ)地蔵も、各所にまつられ、この地蔵の徹底した、庶民救済の慈悲をあらわしている。
七月二十四日の地蔵祭りは、昔は各地区で子供が中心になって、なごやかに盛大に行われたが、今は農村部で、ところどころで続けられているだけである。