農村地帯では昔から、泥落し行事を行う。泥土にまみれて早苗(さなえ)を植えた、その労をねぎらう為の習慣で、里の神々を中心にした田園独自の楽しい一日である。六月の終わりから七月にかけて、地区の役員の指示で泥落し日が決まる。
当日は、農作業は一切休むことになり。柏餅(かしわもち)をつくり、寿司(すし)をつけて、家内中が農繁期を、無事に終了したことを神に感謝する。
通常、神官が地区の当屋に出かけ、里々の神を迎え、五穀の成就(じょうじゅ)、昆虫の解除、里人が夏病におかされることなく、元気に働かれるよう祈願していた。最近までは農家の者が当屋に集まり、早乙女賃金(そうとめちんぎん)、つくり等の日当が決まり、各種の連絡の後、「きゅうりなます」「たこ」の刺身(さしみ)で、直会(なおらい)が開かれていた。最近は、直会(なおらい)を開く地区は少なくなっているが、集いを行っている里は多い。末武郷の上地・浴・西町・和田・西河原・東河原・高塚昭和・平田開作・生野屋の西村・久保地域では山田・来巻で行われているが、これらのうち祭事は行うが、特にしなくなった地域もある。
平田・開作では、青田祈祷(きとう)と称して、七月十日、当屋は家を清め、神官と、住職とを時間を変えて招き、神式と、仏式(真言密教)により祈祷を修し、お札を里中(さとじゅう)の家々に配布する。江戸時代の神仏混淆(こんこう)の姿が残存している。