51 さばら

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 夏、土用の一日で、長く農耕の主動力であった家畜を、水浴させる行事である。沙婆羅(さばら)というが、五月蝿(さばえ)の古語が変化したものか、さだかではないが、何れにしても、家畜に寄生している虫を駆除し、長い農耕の労苦をねぎらう催しである。
 昔は、土用になると、米川・八代方面から、飼料を家畜の背にのせ、各自の弁当を腰にした人たちが、数十頭の家畜を平田川河口まで連れて行き、海水浴をさせたのである。海辺の家畜の集団は、実に見ごたえがあった。帰途もまた、長い行程を暑さに耐えながら、人も家畜も、足軽く引き揚げる。今は家畜も殆(ほとん)どその影を見ず、海辺は工場となり、こうした行事は再び行われないであろう。