55 報恩講(ほうおんこう)

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 真宗の宗祖親鸞聖人(しんらんしょうにん)は、弘長二年(一二六二)十一月二十八日、九十歳で没した。真宗では昔より二十一日から、二十八日までの七昼夜にわたり、宗祖の報恩謝徳のための法要を、報恩講といって行っている。これをまた、御正忌(ごしょうき)・御正当(ごしょうとう)とも称している。西本願寺では、お取越(とりごし)、お引上(ひきあ)げといって、本山の法要の期間をさけて繰り上げて行っている。これは、御正忌(ごしょうき)報恩講には、本願寺より五十里以内に住む者は、檀那寺(だんなじ)の住職が門徒の者を連れて、本山の報恩講に参るので、早く取り越してすますのが、昔からのしきたりであった。
 報恩講は、真宗では一年で一番大切な法要である。昔は各地域で当屋(とうや)に集まり地域の報恩講をしていた。
これを「そらのおとりこし」といっていた。当日は地域の信者は、当屋に集まり、お米や、野菜を持ちよって地域ぐるみで法要をつとめた。各門徒の家には、檀那寺の住職が一軒・一軒回り、報恩講のお経をあげにお参りした。また、一月十五日夜は、大逮夜(おおたいや)といって信者はお寺に集まり、一晩中お通夜といって親鸞聖人のお徳を讃嘆(さんたん)したが、参詣人はいつも満堂にあふれていたのである。