鍛冶屋(かじや)・鋳物師(いものし)・金具細工人・石工(いしく)など、平素、鞴(ふいご)を使う家業の家で、旧暦十一月八日に「鞴祭り(ふいごまつり)」が行われる。これらの家では、この日は一日仕事を休んで、「鞴」を清め注連縄(しめなわ)を張って、酒魚(さけさかな)に赤飯や、餅を供えて、火之炫毘古神(ほのかびこのかみ)・石凝戸辺神(いしこりとべのかみ)・天目一神(あまのまひとつのかみ)を祭った。ふいご祭りは、火を扱う人びとの祭りなので、いつの頃からか稲荷信仰と重なって、稲荷社でも火焚(ほたき)の神事がある。これは昔三条小鍛冶が稲荷山の土をもって刃(やいば)をきたえ、比類のない剣を打ち出したという、いわれによるものという。
この日「鞴祭り」をする家では、みかんまきの行事があるので、子供たちの楽しみのでもあった。