66 年越し(としこし)

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 古来地方によっては、正月の用に備えて、十二月十三日より、山から、たき木を取りはじめるようなならわしがある。このことを「年木(としぎ)」の取初め、或(あるい)は「年伐り(としきり)」などと言い、軒下や庭先に積み上げるなどして、正月準備の重要な行事としていたが、今では家庭燃料等の変化により、殆(ほとん)ど見ることができない。
 しかし、年越し行事は、この十三日から始まる。今では歳の暮れに、親戚とか知友などが集まり、一年の労苦を忘れるための忘年会という酒宴が、活発に行われている。年の瀬を迎えると、一般の家では大掃除をし、神棚・仏壇をきれいにし、また、歳暮(せいぼ)として、いろいろと贈り物などに気を配(くば)り、門松・しめ飾り・餅搗(つ)きと、年越しの準備を行い、大晦日(おおみそか)を迎える。この日には、神社では「年越の祓(としこしのはらえ)」が行われる。また、この地方の風習では「年越そば」を食べているが、これは縁起のよいものとして、細く長く、寿命(じゅみょう)を保つものとして食べるもので、地方によっては運そば・福そば・寿命そばというところもある。
 また、年越しの夜を、「歳の夜」と呼び、神社または、社寺に宵(よい)から参籠(さんろう)して、新しい年を迎える風習が従来からあり、このことから、除夜の鐘を聞いて神社に参拝する。いわゆる「二年参り」ということになってもいるのである。