御本尊である観世音菩薩は、わが身を三十三身に現じて(注)「六道」の衆生を救済するということから、「三十三霊場」が各地におまつりされている。
日本における観音霊場は、西国三十三ヶ所が最も古く(奈良時代=八世紀)、阪東三十三ヶ所(鎌倉時代=一三世紀)、秩父三十四ヶ所(室町時代=一五世紀)、以上合わせて「日本百観音」とし、それに近代新四国三十三ヶ所、周防三十三ヶ所を加えて「日本百六十六観音」となる。
周防三十三ヶ所は、室町時代(一三三八~一五七三)の初期、当国周防三十三観音の巡礼札所として、大内氏二十四代、大内弘世が勧請し創設したと伝えられる。
大内氏は、吉野時代の末期、後光厳天皇(北朝四代)(一三五八)の御代に周防長門の守護職に就任し、以後、義隆(大内三十一代)まで八代に亘(わた)ってこの間約二百余年間の間山口に城を築き、京都と文化交流をして「西の京都」とし、一方では明と貿易をするなどして文化の向上をはかった。札所は文化を吸収する一環として作られたものである。
この周防三十三ヶ所の中で、下松市には「十一番」蓮台寺の如意輪観音(久保・山田)「十二番」分国寺の十一面観音(花岡・粱)および「十三番」の日天寺(花岡・高橋)まで三札所ある。
(注) 六道=一切の衆生が善悪の業により、おもむき住む六つの迷界。すなわち、
地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天上、のことで「六観音」「六地蔵」
「六道の辻」などはこれに由来する。(広辞苑より)
当国(周防三十三観音霊場)巡礼札所 | ||||
一番 | 高森 | 極楽寺 | 真言 | 十一面観音 |
二番 | 祖生 | 長宝寺 | 臨済 | 〃 |
三番 | 三浦 | 松尾寺 | 〃 | 聖観音 |
四番 | 日前 | 普門寺 | 曹洞 | 千手観音 |
五番 | 姫田 | 普慶寺 | 真言 | 〃 |
六番 | 平生 | 般若寺 | 〃 | 聖観音 |
七番 | 余田 | 福楽寺 | 〃上 | 〃 |
下 | 十一面観音 | |||
八番 | 城南 | 蓮池寺 | 浄土 | 聖観音 |
九番 | 立野 | 長徳寺 | 曹洞 | 十一面観音 |
十番 | 太刀野 | 安国寺 | 〃 | 聖観音 |
十一番 | 山田 | 蓮台寺 | 真言 | 如意輪観音 |
十二番 | 粱 | 分国寺 | 〃 | 十一面観音 |
十三番 | 高橋 | 日天寺 | 曹洞 | 如意輪観音 |
十四番 | 一の井手 | 福田寺 | 〃 | 〃 |
十五番 | 上村中山 | 蓮宅寺 | 真言 | 馬頭観音 |
十六番 | 岩屋 | 岩屋寺 | 〃 | 聖観音 |
十七番 | 土井 | 建咲院 | 曹洞 | 〃 |
十八番 | 川崎 | 川崎観音 | 曹洞 | 十一面観音 |
十九番 | 夜市 | 普春寺 | 〃 | 聖観音 |
二十番 | 富海 | 滝谷寺 | 〃 | 十一面観音 |
二一番 | 木部 | 木部観音 | 〃 | 〃 |
二二番 | 岩畠 | 極楽寺 | 曹洞 | 聖観音 |
二三番 | 松尾 | 光明寺 | 真宗 | 十一面観音 |
二四番 | 天満宮 | 満福密寺 | 真言 | 〃 |
二五番 | 右田 | 天徳寺 | 曹洞 | 聖観音 |
二六番 | 岩渕 | 観音寺 | 〃 | 〃 |
二七番 | 鋳銭司 | 岩屋禅寺 | 臨済 | 十一面観音 |
二八番 | 宮野 | 清水寺 | 真言 | 千手観音 |
二九番 | 宗野令 | 泊瀬寺 | 〃 | 十一面観音 |
三十番 | 水の上 | 洞春寺 | 臨済 | 聖観音 |
三一番 | 白石 | 普門寺 | 〃 | 十一面観音 |
三二番 | 朝倉 | 大林禅寺 | 曹洞 | 〃 |
三三番 | 吉敷 | 竜蔵寺 | 真言 | 〃 |
曹洞宗…十四ヶ寺 | 本尊 | 十一面観音…十五ヶ寺 |
真言宗…十二ヶ寺 | 聖 観 音…十二ヶ寺 | |
臨済宗……五ヶ寺 | 千手観音……三ヶ寺 | |
浄土宗……一ヶ寺 | 如意輪観音…三ヶ寺 | |
浄土信宗…一ヶ寺 | 馬頭観音……一ヶ寺 | |
合計 三十三ヶ寺 合計三十四ヶ寺 | ||
当三十三番中 (一ヶ寺二仏あり) | ||
無住 十二ヶ寺あり | ||
(下松地方史より) |