目次
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下松市の石造文化財 祈りと生活
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七、石燈籠(いしとうろう)について
2、常夜燈(じょうやとう) (西市貴布祢社(にしいちきふねしゃ))
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西市は、本往還ではないが、上の関、大島郡、熊毛往来のほか、他国の役人も海路の風向きによって待ち合わせの上陸地として栄え、継ぎ立てのため駅馬六頭と人足三十三人を用意して諸用にたてたという、塩田と海上交通とで栄えた町であった。貴布祢社はここに鎮座するお社で、祭神は雨を司(つかさ)どり海上交通神として尊崇される高靇神(たかおかみ)である。
元禄時代の藩の寺社詮議(せんぎ)の際にも、小さな神殿ながら末武下村総鎮守として御根帳入りして遠近の崇敬を集めたものであった。
ここに西市の人が産土神花岡八幡宮へ毎夜燈明を奉献した花崗岩製の常夜燈がある。高さ三メートル、笠(かさ)幅八十三センチで正面と側面に「八幡宮常夜燈」「明和七年庚寅九月吉祥日」(一七七〇)と深く刻まれており、二百余年を経た今日も、当時の土地の人々の敬虔(けん)な礼拝の姿がうかがえる。