1 手水鉢(てみずばち) (中市 荒神社(なかいちこうじんじゃ))

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 荒神社は、道路新設のため元町から中市へ遷座され、その時、鳥居や手水鉢も移されたものである。手水鉢は安永四年(一七七五)の奉献であり、鳥居は天保三年(一八三二)の建立である。
 荒神社の創建については、明治年間にできた「山口県風土誌」に、天和三年(一六八三)と記されている。
 祭神については、
 「荒神さまの御神体は、下松の磯に荒神様・毘沙門様・弁天様の三体が、つぼに納められて着いていた。それを漁師がおまつりしたものである。」
とのいい伝えもある。
 荒神社は、火除(ひよ)けの神としての信仰とともに、漁業の神としても漁民の信仰が厚かった。荒神社の祭礼には、漁民を中心とした、「けんか祭り」が行われたと古老は話している。
 荒神社信仰から、奉献されたこの素朴な手水鉢も、信仰にまつわるこうした庶民の生活の姿を、二〇〇年の永い年月にわたってながめながら、人々の身と心を清める手水をたくわえて、ここに位置してきたのである。