[信仰石(しんこういし)について]

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 上古、神霊のおより給う所として清浄な土地を選び、周囲に常磐木(ときわぎ)を植えて神座としたものを「神籬(ひもろぎ)」という。すなわち、神霊のおより給うために造られた聖域で、祭祀(し)の対象にするため一定の清浄な地域に、人為的に樹枝等をもって限定した場合と、霊代そのものとして、鏡、玉等と同様の意味に取り扱われた場合とがある。この樹枝等にかえて岩石で造った場合には「磐境(いわさか)」といっている。
 信仰石は、霊代そのものとしてまつったもので、海浜にあるものには、海中の石が幾度捨てても網にかかるということから持ち帰り、海神として信仰することにより、漁業のさまたげになることなく、大漁、海上安全の神になったともいう。
 また、霊山の姿のよい石を家に持ち帰り私物化したため、その家に悲運なことが続いた例はよく聞くことである。これは、多くの先人が神の霊代として、「信仰石」と称して仰いでいたものだからである。