所在地 下松市花岡(多宝塔内)
所有者 閼伽井坊
棟札というのは、棟(むな)上げ時に工事の由緒、建築年月日、建築者や工匠(こうしょう)名などを後世に伝えるため記録して棟木に打ちつけた木製の札のことである。
高さ約一メートル、幅二〇センチでいずれも札の中央部に
「奉重修覆防州都濃郡華岡多宝塔」
と書かれてあり、時の毛利藩主名のほか執政、郡吏、社務、社司、庄屋、大工名がそれぞれ書き込まれている。
五枚の棟札は、いずれも一七〇〇年代の約七〇年間のもので、この時代にかなり計画的な大修理があったように思われる。追加指定を受けるのは、重要文化財の付属物として高く評価されたためで、このほかにもこの時代の郡吏などの関係者を知ることができるなど、歴史的な考察資料としても価値がある。修理年は次のとうりである。
1、元禄十三庚辰年(一七〇〇)
2、享保八癸卯年 (一七二三)
3、延享元甲子年 (一七四四)
4、宝暦七丁丑年 (一七五七)
5、安永六丁酉年 (一七七七)
次に一番古い棟札の記録を記してみると、
表 大檀主 従四位下行侍従兼大膳大夫大江吉広朝臣 執政 佐世主殿源広久
奉重修覆防州華岡多宝塔 郡吏 坂九郎左衛門匡澄
右為武運長久国家安全壽福増長子孫繁昌諸願成就也 社務 地蔵院秀雄堯白
干時 元禄十三庚辰年六月吉祥日 閼伽井坊慶音良長
社司 村上兵庫助藤原基重
裏 普請奉行 秋田九左衛門貞次 大工 忠左衛門