閼伽井坊塔婆(多宝塔)附 棟札

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棟札

《国指定重要文化財》
(建造物)閼伽井坊塔婆(あかいぼうとうば) (多宝塔)(たほうとう) 一基
附 棟札 五枚

指定年月日昭和25年8月29日
所在地下松市花岡戎町
所有者閼伽井坊

 この塔は藤原鎌足の建立16塔の一つと伝えられているが、建築様式や装飾蟇股(かえるまた)から室町時代中期から後期にかけての建造と推定される。また昭和3年解体修理の際「永禄三庚申年」(1560)の墨書された木片が発見され、あるいは建立年代を示す資料とも考えられる。方三間(429cm四角)、二重の塔屋根は柿葺(こけらぶき)、総高1,350cm、周囲に廻椽(まわりぶち)を付し、内部四天柱には天井長押(なげし)を巡(めぐ)らし鏡天井で、須弥壇(しゅみだん)には本尊金剛界大日如来が安置されている。
 手法は繊麗で建物の外形も実に美しく、厳島神社等の多宝塔と比して遜色のないものである。
 また、この多宝塔は江戸時代元禄13年(1700)、享保8年(1723)、延享元年(1744)、宝暦7年(1757)、安永6年(1777)等に修理されており、その時の記録として棟札(むねふだ)が残っている。
 棟札とは、建物の建立や修理にあたって、その棟上(むねあげ)時に建物名・工事年月日・施主・工事由緒・大工名などを記録して棟木(むなぎ)に打ちつけた板のことである。
 この多宝塔の棟札にも、時の毛利藩主や執政・郡吏・社務・社司、その他普請奉行・庄屋など工事関係者の名前が書きしるされており、多宝塔の過去の変遷状況及び当時の関係者名を知る貴重な歴史資料で、昭和54年2月3日に重要文化財多宝塔の附(つけたり)として追加指定された。
 なお、参考までに棟札の一つの記録を次にあげる。