本書は、主に『下松地方史研究』や講演で発表した原稿を輯めたものであるが、初期のものは、既に三十年余りが経過しており、今回若干の加筆改稿を行うこととした。このため統一を欠き、項目により重複する部分もあるが了解されたい。又本書には、新しく写真・古文書・地図等の資料を出来るだけ掲載しておいた。それは第一に内容の補強であるが、又若い読者が郷土史研究へ興味をひき、その理解に役立てばと考えてのことである。
尚表題を『下松市史異説』としたが、これは勝手な私の見解を述べただけのことである。したがって本書で主張したことは、一般には認められていないことが多いが、すべて研究は、定説や先学を踏み台にしてこそ史実に迫ることが可能である。今後諸賢のご高評をいただき本書が叩台となり、新しい郷土史研究の展開につながれば幸である。
平成十一年二月六日
河村蒸一郎