拝殿に向って右側前方には、鶴・亀と三神石の三群からなる枯山水様式の庭があり、そのほぼ向い側には、借景式と思われる庭園がある。又多宝塔前方には、池庭(涸)が存在する。これら境内に存在する庭園の内、はじめの二庭は技巧的ではあるが地方ではめずらしく、洗練されており江戸時代後期庭園文化の特徴を有する立派なものである。『山口県寺社名勝図録』(明治三十年十二月・大阪大成館)を参照されたい。このような庭園が遺存するのは、おそらく当宮の宮司村上基徳の関与によるものであろう。彼は若くして京の公家に仕え庭園への造詣深く地方誌(註一)には、その技に長じたことが記されているが、その遺構については、今日まで検討されることがなかった。以下それぞれの庭について述べよう。
『山口県社寺名勝図録』 花岡八幡宮(部分) 大阪大成館 明治三十年十二月出版
(註一)『花岡教育誌』花岡小学校 昭和二十六年
『徳山市都濃郡名鑑』防長新報社 昭和十二年