寛永元年(一七四一)には藩に当寺から次の如く上申している。(『寺社由来』)
徳山領
山田村
真宗
光円寺由来書
覚
一都濃郡山田村の内江ノ原真宗光円寺、本尊無量寿如来一尊、但シ木仏、脇士聖徳太子一輻絵像、并七高僧一輻絵像、宗祖親鸞聖人一輻絵像、血脈伝法の祖師良如上人一輻絵像、右四輻絵讃の儀は、絵の儀は本山の絵師番馬新兵衛并ニ土倉但馬、讃と御裏書御判形等の儀ハ本山より御免にて御座候
一当寺開基ハ石田氏何某出家して法名釈了意と申候、死去ノ年号月日未知申候、第二世釈正玄代、寛文元年丑ノ年ニ寺号木仏本山より申請候て、万治四年丑五月十日往生仕候、第三世釈了尊、正徳三巳正月十八日往生、第四世釈知教代、享保五年子ノ十月ニ右四輻絵讃并国官迄免与にて、同十四年戌(ママ)二月十四日往生仕候、第五世釈嶺椿、元文四未二月廿二日往生仕候、第六世当代法名義泊と申候
一本山は山城国愛宕郡大谷竜谷山西本願寺流、摂州堺善教寺門徒、防州都濃郡富田村善宗寺下、同郡生野屋教応寺末寺の山田村江ノ原光円寺にて御座候
一太鼓 一張
右地下百姓武兵衛と申ものより寄進、年号月日未知申候
一釣鐘 一口
銘日
山田之郷 光円仏場 蒲牢初掛 梵吼新良 弘闡道教
掴裂魔網 普救群界 流伝吉祥 懸吏匡法 民家勤常
共成斯器 徳斉雷壌
元禄十四年巳正月廿五日
光円寺知教
鋳工三田尻尾本清左衛門尉藤原信次
庄屋為国清左衛門
右の外為何品も無御座候、当寺由来如斯御座候、以上
都濃郡山田村江ノ原
寛保元年酉十二月十日 真宗光円寺(印)
井上武兵衛殿
右の内光円寺の所在地山田村江ノ原について宝城興仁氏は
「光円寺が最初にあった地は、山田江ノ原といわれているが、江ノ原の地名は現在では小字名にも残っていない。江ノ原は、現在の梅ノ木原であるともいわれている。」(『下松地方史研究』第五輯)
と記されていて寺院が江ノ原から現在地に、移転したものと解されているが、右に掲げた寛保元年(一七四一)の『寺社由来』よりわずか八年後の寛延二年(一七四九)の上申書『防長地下上申』には、
山号無之
一真宗光円寺 江ケ原ノ内こいぢニあり
但由緒之儀ハ寺より可被申出候事
と記されている。こいじ(越路)は河内村(岡市)から山田村へ至るわずかな山越え路で、入口の村境には一里塚が在った。右のこいじを含めて北を江ケ原又は江ノ原と称していたのである。つまり現在光円寺のある場所が即ち江ノ原之内こいぢなのである。尚江ノ原の地名は存在しないが、現在光円寺のあるこいぢの地名は今も小字名として登記簿にも立派に実在している。したがって光円寺が遷ったのではなく江ノ原の地名が変更したものである。
光円寺手水鉢 宝暦四年(一七五四)
光円寺(現在)