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(一六) 滝、石組

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 このような自然式庭園に於いては、滝をもって主景を構成するものが多く「景色図」にも十七庭に描かれ、その内枯滝が十五庭と圧倒的に多いのは、適当な水源が存在しないためであろう。栗屋村の吉祥院庭は『築山庭造伝』後編「草之築山之全図」を参考にしたものだが、流れを示す池の部分には小石を敷いて枯流としている。おそらく図示されたような豊かな水量が不在のためであろうが、当時といえども実際に充分な流れを意匠するだけの立地条件を具備する処は、多くなかったようである。
 現在の吉祥院の庭は書院背後の裏山との空地を利用したもので、位置は景色図の庭とおそらく同一であろうが、庭は全く別のものである。現在の庭は向って中央やや左寄りに、枯滝を構成し小石を敷いてゆるやかな流れを象り、手前に池を設け池泉中央に中島を配置している。池泉手前書院との間には、飛石を打ち庭の随処にサツキの刈込を置く。その他池辺要所は乱杭で装飾する等、石組手法、地割いずれも明朗を旨としたものでおそらく明治末期~大正頃新しく造りかえたものであろう。