他に一つ切戸は切門(キレト)の転訛したものとも推考される。門(ト)とは、一般に狭い通路を云い河内村では、中戸原がそのよい例である。上は出合で小野川と切戸川の合流による広い平野があり、下には吉原川と切戸川の合流による平野(大河内・古くは大開地)がある。この中間にある山に挟まれた幅わずか百m余りの細長い平野が即ち中戸原である。このように細長い場所を門・戸(ト)と称した例は多い。
さて右図に示したように、字切戸の地は、玉鶴川と切戸川に挟まれた細長い土地で、山陽本線下でもわずか幅七七米である。
周知のように玉鶴川は、人口による悪水川であって、自然の渓谷を受けていない。つまり上は川というより溝である。字切戸を過ぎたところで川は二分し、これより上流に細長い門状の地形(中島)はなくなることから、門が切れる即ち切門・切戸(キレト)と称したのではないであろうか。
前者は高潮を防ぐための板戸でキリト、潮水の切れる処であればキレトであろう。又後者の二つの川に挟まれた細長の地形(門・戸)が切れたところであればやはりキレトと称するのが妥当のようだがいかがであろうか。