(二) 大内氏最後の姫

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 豊浦郡菊川町下保木に杉井さんという家がある。
 杉井家は昔、庄屋で大内氏のお姫様が持ってきたといわれる地蔵菩薩が小さなお堂におまつりされている。
 陶晴賢のため難を逃がれてきた姫は切腹せざるをえなくなり、侍女ともども死んだと言い伝えがあり、杉井家では家の先祖より大切に姫達を供養されている。
 現に、杉井家の裏には、お姫様の墓と、その時、持って来た物入等も残っている。
 特にお姫様の念持仏だったといわれる地蔵菩薩は小さなお堂におまつりされ、毎年供養がおこなわれている。
 私は、たまたまその地蔵菩薩さまの修理をすることになった。
 このため、大内氏と深い深い霊的な縁が結ばれたのではないかと考えている。
 地蔵菩薩を修理するにあたり、まずお経をとなえてかかるわけですが、なぜか、特に念をいれてお経をあげさせられたという気持がした。
 地蔵菩薩を修理するため手をかけると、自然と口からお経が出て来た。
 修理にかかって何日かして、終わりに近いある朝、不思議な夢を見ました。
 〝炉端に古い地蔵菩薩さまが立っておられ、そこに私がいるのです。
 すると、十七、八歳位の白衣を着た美しい女性が侍女をつれて現れた。私はその瞬間、切腹されたお姫さまと侍女だと思ったのです。〟
 その後、不思議なことが、一、二度ありました。
 杉井さんに、お姫さまの話をしますと、実は、私もこの杉井家に嫁ぐ時、杉井家の前の池の上から美しいお姫さまが現れて手まねきされた夢を見て、お嫁にくる決心をしましたと、話してくださいました。
 また、不思議なことに、私がお姫さまの姿を見た同じ時期に、内田家に嫁いだ杉井の娘さんが初めて大内のお姫さまの姿の夢を見せられましたと私に聞かせてくれました。
 何百年も前に亡くなった者が、生きている我々に姿を示すということは、体験したものでなければなかなか理解しにくいものである。
 その後、私は大内氏の先祖達の供養をするようになった。
 そして又、下松の昔の領主、鷲頭氏の子孫の供養もするようにもなった。