地形概要

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多摩市は、標高五〇~一六〇メートルに広がり、丘陵地の起伏を反映した市域を有している。この市域は、多摩丘陵本来の特徴を残す北部と、多摩ニュータウンの広がる南部の人工改変地とに大きく分けることができる(図1―3)。

図1―3 市域の地形分類図
①~⑪は図1―10の1~11、⑫~⑯は図1―13の12~16の地点番号にそれぞれ対応。また、⑰は図1―12、⑱は図1―16の調査地点。a-b、c-d、e-fは図1―9に、g-hは図1―5に対応。枠Aは図1―4、Bは図1―7、Cは図1―8の範囲にそれぞれ対応。
人工改変地の切土地および盛土地は、多摩ニュータウンの開発前後で地盤高が10m以上低下(切土)または増加(盛土)した部分に相当。改変工事中区域は昭和63年7月時点。

 市北部はおもに丘陵地、河岸段丘、谷底(こくてい)平野、氾濫低地などバラエティーに富んだ地形によって構成される。市域の丘陵地は、近年の宅地化の対象地とされてきたが、連光寺周辺では旧来の状態を良く残している。河岸段丘は、大栗川・乞田川の流路に沿って、標高六〇~八〇メートルに発達する。市域の段丘は、発達する高度によって高位段丘と低位段丘とに区分され、高位段丘はとくに大栗川右岸に広く分布している。大栗川・乞田川の河道に沿って、あるいは丘陵地内に発達する侵食谷の谷底には、谷底平野が発達する。谷底平野は、丘陵地内では枝を広げたように発達するが、下流部では多摩川の氾濫低地に移行する。多摩川の氾濫低地は、自然堤防を伴って市の北縁をほぼ東西に連続している。
 市南部に広がる人工改変地は、多摩ニュータウンの建設を目的とした大規模な地形改変によって出現した。このため市南部では、野趣あふれるかつての多摩丘陵の面影を感じとることはできない。ニュータウン建設が行われる以前の丘陵は、昭和三十二年(一九五七)発行の地形図によると細かい谷が発達し、大きい起伏(起伏量四五メートル以上)を有していた(年報4一~十二ページ)。当時、乞田川流域に広がっていた丘陵地は、起伏量三〇~四四メートルの部分が広く、四五メートル以上の部分も散在していた。また、桜ケ丘や多摩センターを中心とする地区などでは、起伏量は五〇メートル以上を示し、里山と呼ぶにふさわしい場所であったと考えられる。ところが、昭和四〇年代に地形改変が始まると、土地の利用効率が優先され、丘陵の尾根付近から削られた土が谷底平野に盛られて、丘陵地の平坦化が推し進められた。この結果、起伏に富んでいた丘陵地は、おもにコンクリートからなる構造物を乗せる、標高一〇〇~一二〇メートルの人工台地へと変ぼうを遂げていった。以下では、これら市域に展開する多様な地形を一つ一つ取り上げ、その特徴について記述していく。