丘陵地

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丘陵地とは、山地と呼ぶには低く平地と呼ぶにはでこぼこのある、いわば山地と平地との中間的な起伏をもった地形を指す。しかし、たんに丘陵地といっても、様々な特徴をもった地形(小地形)の集合である。すなわち、丘陵地の地形は丘頂斜面、丘腹斜面、丘麓(きゅうろく)斜面、谷底面(谷底平野)などによって構成されている。
 丘頂斜面は丘陵の尾根部を占め、比較的厚い土壌層が発達する緩傾斜の地形である。この地形は、横断形が凸型であるため地下水が集中せず、表層が比較的乾燥している。丘頂斜面の下方には、急な傾斜を示す丘腹斜面が発達する。急傾斜であるため、丘腹斜面は土壌層が薄く、降雨や地震などによって小規模な表層崩壊の発生する場合がある。したがって丘腹斜面は、丘陵地の中で最も不安定な地形であるということができる。丘腹斜面から崩壊によってもたらされた土砂は、丘麓斜面に堆積する。このため丘麓斜面は、比較的厚い土壌層を発達させ、傾斜も丘腹斜面に比べて緩くなっている。丘麓斜面の下方には、緩傾斜の谷底面が発達する。この地形は、上流からもたらされる流水や地下水が集まるため、湿性化していることが多い。
 丘陵地を構成するこれらの地形は、ニュータウン開発から免れた場所では比較的まとまって残されている(図1―3および口絵)。とくに、連光寺公園から多摩川を望む桜ケ丘ゴルフ場にかけては、丘頂斜面から谷底面までの地形が良く保全されている。なかでも連光寺公園は、丘頂・丘腹斜面が巧みに利用された公園造りがなされている。連光寺公園の北に広がる丘陵地(図1―4)は、比較的平らな丘頂斜面と、馬てい形の小谷をもつことから、市域で認められる平均的な丘陵地の一例とみることができる。この丘陵地は、次のような特徴をもつ。

図1―4 連光寺に発達する丘陵地の微地形分類図
図1―3の枠Aの範囲。a;丘頂斜面(平坦面) b;丘頂斜面(頂部斜面) c;丘腹・丘麓斜面 d;谷頭斜面 e;谷底面 f;人工改変地

 丘陵地の丘頂斜面は、標高一二〇~一三〇メートルに発達し、谷底面との高度差(比高)は、上流側で五~一〇メートルと小さく、下流側で二〇~三〇メートルと大きい。丘頂斜面は比較的幅が広く、傾斜は平均で五~一〇度と緩くなっている。このような地形的特徴は、この丘頂斜面が多摩Ⅰ面の堆積面であることに由来している。いっぽう、丘頂斜面の下位に発達する丘腹斜面の傾斜は、平均で二〇~三四度、北向きの斜面では三九度に達する急傾斜の部分も存在する。丘腹斜面では、表層崩壊は発生していないが、過去に起こった崩壊による土砂が谷頭(こくとう)斜面に堆積している。すなわち、谷頭斜面は背後に丘頂斜面または丘腹斜面をもち、上流側で崩壊による土砂の堆積、下流側で水流による侵食を受ける地形である。この谷頭斜面では、下流側の谷底面に接する部分で、水流の集中による侵食を確認することができる。なお、谷底面は一部で湿性状態を認めることができるが、表面の大部分は暗きょ工事によって乾燥化している。谷底面の傾斜は、幅によってばらつきがあるが、平均で五~八度の緩い傾斜を示す。
 連光寺公園北の丘陵地のように、丘陵の地形がまとまって残る場所は、市域では少なくなってきているが、日野市との市境や府中ゴルフ場などにも丘陵地の地形がわずかに残されている。これに対してニュータウン開発地域は、大規模な造成工事によって丘頂・丘腹斜面が削り取られたため、丘陵地本来の地形はほとんど残っていない。その名残りが、愛宕一丁目、貝取一丁目、豊ケ丘一丁目や南野二丁目の一本杉公園などに点在するだけである。