河岸段丘

13 ~ 14
段丘とは河川、湖、海などに沿った階段状の地形である。この地形はもとの河原(氾濫原(はんらんげん))、湖底、海底が隆起したり、侵食されることによって形成された。これら段丘は、つくられた場所によって河岸段丘、湖岸段丘、海岸段丘などと区別されている。市域でみられる段丘は、大栗川や乞田川の流路に沿って発達しているので河岸段丘である(図1―3)。この段丘は大栗川の右岸で広く、発達する高度の違いから高位段丘と低位段丘に分けることができる(図1―5)。乞田川の下流にも、わずかに高位段丘が広がっているが、かつてはこの流域のあちこちに段丘が形成されていた(宇野沢・岡一九七二)。しかし、これら段丘の多くはニュータウンの建設に伴って造成され、今では確認することが難しくなってしまった。なお、多摩丘陵西部に展開する多摩Ⅰ面は、古相模川のつくった段丘であるが、形成時期がおよそ五〇万年前と極めて古く、侵食が進んで平らな面がほとんど残っていない。このため、ここでは多摩Ⅰ面を段丘として扱わないことにする。

図1―5 大栗川右岸に発達する河岸段丘の断面
断面の位置は、図1―3を参照。

 大栗川右岸に位置する高位段丘は(図1―6)、東寺方から和田の南部にかけての標高七〇~八〇メートルに発達し、市域で最も広い面積を占めている。段丘の傾斜は、上流側から下流側に向かって一〇〇〇分の六程度、大栗川に直交する方向でも一〇〇〇分の二〇程度と緩い。段丘上は、このように比較的平らであるが、段丘と大栗川の河床との比高は、東寺方の宝泉院付近で一五メートル(図1―5)、和田の高蔵院付近で一六メートルもある。また、大栗川から段丘上に向かって、幅五〇~八〇メートル、長さ八〇〇~一〇〇〇メートルの侵食谷が発達している。この侵食谷は、深さ二メートル程度と浅く、丘陵地に発達する谷とは異なった形態を示している。いっぽう、乞田川下流の連光寺二丁目から三丁目にかけての高位段丘は、丘腹・丘麓斜面に連続するように、標高六五~八四メートルに分布している。この高位段丘の傾斜は、大栗川のそれに比べて急で、北西方向に一〇〇〇分の三七程度の傾きがある。乞田川との比高は、連光寺二丁目の本村公園付近でおよそ二二メートルと高いが、段丘を切って発達する谷底平野とは八~一四メートルと小さくなっている。

図1―6 和田から東寺方に広がる高位段丘

 低位段丘は、大栗川右岸、並木公園の北東に位置する、標高六〇メートルの段丘である(図1―5)。この段丘は、一辺が一〇〇メートル程度の小さい段丘であるが、上位段丘との間におよそ六メートルのがけ(段丘崖(だんきゅうがい))が形成されている。この段丘崖は、地図上でも明らかな傾斜変換線として認めることができる。低位段丘と大栗川の河床との比高は、およそ四メートルを示し、高位段丘のそれに比べて小さい。