多摩丘陵西部では、多摩ローム層は御殿峠礫層の上位にこれを被覆して発達するが、主として丘頂部に点在的に残るのみで、その分布面積は極めて狭い。くわえて、多摩Ⅰローム層上部が発達する(岡一九九〇)とされる市南部では、多摩ニュータウンの開発地域にあたったため、今ではほとんど観察することができない。しかし、羽鳥・寿円(一九五八)によると、連光寺東方の峠で層厚一〇メートル以下の多摩ローム層を確認している。また、宇野沢・岡(一九七二)は、昭和四十年代後半に、ニュータウンの造成に伴って造られた大規模な露頭やボーリング調査などから、市域のいくつかの地点で多摩ローム層以上のローム層とこの中に挟まれる火砕質鍵層を確認している(図1―13)。図1―13によれば、多摩ローム層は、御殿峠礫層の上位に三~一五メートル程度の厚さをもって堆積していることがわかる。ローム層中の鍵層としては、先述したHBP・Tlu―25のほか、早田ローム層中の鍵層Tm―2・Tm―8(FT年代は二三万五〇〇〇~二四万六〇〇〇年前)や土屋ローム層中の鍵層Tu―8などが確認されている(図11・16)。とくにHBPやTlu―25は複数の地点で確認されており、地層中の良い指標となっている。
図1―13 多摩ローム層以上のローム層と火砕質鍵層
12;長坂 13;豊ケ丘 14;鶴牧 15;中沢 16;大松台(各地点の位置は図1―3を参照) G;御殿峠礫層 Kz;上総層群
宇野沢・岡『多摩丘陵北西部関東ローム地質図』を編集。