図1―15 富士火山における火山砕屑物の厚さ分布
1;富士火山の全砕屑物の等厚線(約8万年間) 2;新富士火山の砕屑物の等厚線(約5千年間、除宝永噴火) 3;宝永山の砕屑物の等厚線 4;第四紀の火山
貝塚・鈴木「関東の地形と地質」を編集。
これら武蔵野・立川ローム層中には、小原台軽石(Op)、東京軽石(Tp)、姶良Tn火山灰(AT)など多数の火砕質鍵層が知られている(表1―1)。これらの鍵層は、鉱物組成や噴出時期から地形面の対比に利用されている。武蔵野ローム層下部に挟まれる小原台軽石(Op)は、粒径一~五ミリメートルの黄色軽石で、ローム層中に粒状に点在する。FT年代は六万六〇〇〇±六〇〇〇年前(町田・鈴木一九七一)であり、鉱物組成は構成比の高いものから順に磁鉄鉱、しそ輝石、普通輝石、角閃石(岡・菊地・桂島一九八四)となっている。東京軽石(Tp)は、武蔵野ローム層上部の代表的な火砕質鍵層である。本鍵層は岩片や重鉱物粒が中粒砂状に混じる黄色軽石で、鉱物組成は構成比の高いものから順に磁鉄鉱、しそ輝石、普通輝石(岡・菊地・桂島一九八四)となっている。東京軽石のFT年代は、四万九五〇〇±五〇〇〇年前(町田・鈴木一九七一)とされる。いっぽう、姶良Tn火山灰(AT)は、鹿児島県の姶良カルデラが二・一~二・二万年前に噴出した鍵層(町田・新井一九七六)で、武蔵野ローム層の上位に重なる立川ローム層に挟在される。これは大部分が白色細粒の火山ガラスからなる軽石層で、東北地方までの広範な地域に分布しているのが特徴である。鉱物組成は、構成比の高いものから順にしそ輝石、普通輝石、角閃石(前掲、岡・菊地・桂島一九八四)となっている。
なお、立川ローム層中には、二~三層の埋没土壌(暗色帯、黒バンド、チョコ帯などとも呼ばれる)を認めることができるが、これは富士火山の活動の休止期を示している。富士山が一メートルのローム層を堆積させるのには、およそ一〇〇回の噴火が必要であると考えられているが、埋没土壌の存在は、噴火が連続的ではなく二~三回の静穏期があったことを示す。