土壌は、地球の表面のほんの数十センチメートルにすぎないが、われわれ人類を含めた生命体を育み、そしてその遺体を分解して、生態系を維持する重要な要素として機能している。人類にとっては、食糧を生み出すものとして環境を構成するもっとも重要な要素でもある。しかし、現代人にとっては、忘れられた存在となりつつある。土壌がなくても生きてゆけると錯覚しているのである。
土壌が文明を生み出した人々を支えているときは、文明は花開く。しかし、土壌の荒廃が人々の目には見えにくい形で、深く進行していき、気が付いたときには、もはや取り返しのつかない状態となると、人々はその土地を捨て、新天地を目指し、文明は滅びた。地球には限られた土地しか残されてはいない。土壌を大切に、よりよく利用して、われわれの生活を豊かにしなければならない。
本章では、まず、多摩市の土壌の成り立ち、ついで、多摩市の土壌の分布とその性質、最後に、多摩市の土壌の水稲生産力と土壌タイプとの関係を述べたい。