多摩市の土壌のもう一つは、多摩丘陵に分布する黒ボク土壌から黄褐色森林土壌や黒ボクグライ土壌に連続的に変化する土壌グループ(岡崎一九九〇)である。昭和四十年(一九六五)以来、多摩ニュータウンの開発が進み、大部分が人工的に改変された土壌(一八七一ヘクタール、八八・八パーセント)となった。しかし、開発以前の多摩丘陵は、平坦な頂部を有し、緩やかに東に傾斜していて、単純な地形のように見受けられるが、詳細にみれば、開析された谷が複雑に入り込み、起伏に富む地形をなしていた。
多摩丘陵の一部に残された自然地形は、一定の微地形単位配列をみせる(Tamura一九八一)。微地形単位の配列に対応して、土壌単位も一定の配列を示すことになる。多摩丘陵の谷頭部を持つ流域の土壌には、尾根型系列と谷型系列とが認められる(岡崎一九九〇)。尾根型系列は、黒ボク土壌(淡色黒ボク土壌)→淡色黒ボク土壌/黄褐色森林土壌→黄褐色森林土壌→多湿黒ボク土壌→黒ボクグライ土壌であり、谷型系列は、黒ボク土壌(淡色黒ボク土壌)→崩積性黒ボク土壌→多湿黒ボク土壌→黒ボクグライ土壌(A系列)、および黒ボク土壌(淡色黒ボク土壌)→崩積性黒ボク土壌→→グライ土壌(B系列)である。丘陵頂部からの黒ボク土壌の流れ込みが少ない谷頭部では谷型B系列を示す。住宅地、ゴルフ場などの開発によって多摩丘陵の頂部のほとんどが削剥され、谷部が埋められたために、自然土壌の配列はなかなか見られなくなった。図1―22には、淡色黒ボク土壌(東京都農業試験場一九八二)および黄褐色森林土壌(岡崎一九九〇)は図示されていない。淡色黒ボク土壌は、黒ボク土壌・腐植質(農地)(三三ヘクタール、一・六パーセント)あるいは黒ボク土壌・腐植質(林地)(一六七ヘクタール、七・九パーセント)に含まれている。黄褐色森林土壌は分布面積が少ないために、五万分の一土壌図には図示されない。黒ボク土壌や黄褐色森林土壌の大部分を覆っていたコナラ―クヌギ群集(Quercus acutissima-Quercus serrata Association)は、美しい武蔵野の雑木林を形成していた(宮脇ら一九六九)。しかし、宅地造成が進展するに伴って、自然土壌と同じように、コナラ―クヌギ群集やコナラ―クワ群集は減少し、わずかに公園やゴルフ場の一部に残存しているにすぎない(多摩市一九八一)。