小規模改変地土壌

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TM4は、豊ケ丘北公園内の頂部平坦面に位置する標高一三〇メートルの地点で、傾斜が三度の南向き斜面にある(図1―21)。植生はアカマツを交えたクヌギ、コナラ優占林である。土壌は、A/B1/B2の断面形態をもち、表層は腐植含量の高い黒ボク土壌(表層多腐植質黒ボク土)である(図1―23)。赤色および黒色スコリアに富む。活性アルミニウムテストはすべて++の反応で典型的な黒ボク土壌であった。一次鉱物組成は、本土壌が、火山噴出物を母材として発達したものであることを示している。重鉱物は、しそ輝石三・七~七・二パーセント、普通輝石〇・四パーセント、角閃石〇・八~二・〇パーセント、かんらん石一一・四~一六・〇パーセント、磁鉄鉱一・八~六・八パーセントであった。軽鉱物は長石類が二~二〇パーセントで、石英は〇・四パーセントにしかすぎなかった。火山ガラスはBW型が一九~三四パーセントで、下層ほど増加する傾向にあった。風化粒子はスコリアで、二九~四七パーセント含まれていた。A層中には植物珪酸体が一七粒子検出された。土壌の孔隙率は七六~八一パーセントと高く、逆に固相率は一九~二四パーセントで、黒ボク土壌の特徴を示していた。土壌pH(H2O)は、五・二~五・五、pH(KCl)は四・八~五・一であった。電気伝導度は四三~七八μ S-1で、一般的な黒ボク土壌の範囲内にあった。全炭素含量は九・八~五八gkg-1、全窒素含量は〇・九~三・七gkg-1で、野外調査の土色とよく一致していた。有効態リン酸はきわめて低く、〇・三~〇・七mgPkg-1で、植物が吸収できるリン酸は不足している。リン酸吸収係数は、すべて二三〇〇mgP2O5(100g)-1を超える二三二〇~二六五〇mgP2O5(100g)-1で、リン酸を吸着、固定する能力が大きく、植物へのリン酸の供給は制限されている。陽イオン交換容量はアロフェン質の粘土鉱物主体とする二次鉱物および有機物含量を反映して三八~五八cmol(+)kg-1あった。交換性陽イオンは低く、交換性カルシウム一・八~七・四、交換性マグネシウム〇・七~二・五、交換性カリウム〇・〇二~〇・一一、交換性ナトリウム〇・一六~二・八cmol(+)kg-1であった。したがって、塩基飽和度は五~三二パーセントと低く、塩基未飽和の土壌ということができる。
 TM5は、TM4に隣接した豊ケ丘北公園内の北向きの頂部緩斜面に位置する標高一二九メートルの地点である(図1―21)。植生はシラカシを交えたクヌギ、コナラの優占する二次林となっている。土壌断面はA/Bからなり、A層は四〇センチメートル、南向き斜面よりも厚い(図1―23)。本土壌は、深い層にまで腐植含量の高い土層が続く黒ボク土壌(厚層腐植質黒ボク土)に分類される。重鉱物は、しそ輝石五~一〇パーセント、普通輝石〇・四パーセント、角閃石一~二パーセント、かんらん石一二~一七パーセント、磁鉄鉱七・六~九・五パーセントで、かんらん石を主体としていた。軽鉱物は長石類が一九~二一パーセント、火山ガラス軽石型スポンジタイプが九~二三パーセントを占め、南向き斜面の土壌よりも軽石型が多い特徴を有していた。風化粒子は二四~三一パーセントで、そのほとんどは、スコリアであった。土壌の固相率は二一~二四パーセントで、孔隙率の高い黒ボク土壌の特徴をよく示していた。土壌pH(H2O)は五・三~五・四、pH(KCl)は四・六~四・八で、A層とB層の違いは小さかった。電気伝導度は、三九~五七μ Scm-1で、TM4の南向き斜面の土壌と大きな違いは認められなかった。有機物含量(全炭素三六~四二gkg-1、全窒素二・七~三・五gkg-1)はB層においても高く、南斜面の土壌とは明らかな違いを示した。しかし、陽イオン交換容量、交換性陽イオン含量には、南北斜面の土壌に違いはみられなかった。多摩丘陵頂部付近の土壌はTM4あるいはTM5にみられるように、リン酸が欠乏した不良土壌とよばれてきたが、TM2のように永年に渡る土壌改良によって、現在では、他の土壌と比べ劣らぬ収量をもたらすようになってきた。