気候概観

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多摩市は関東平野の南西端にあって、南は多摩丘陵、北は多摩川にはさまれているという地理的位置にある。年平均気温は一三・七度C、年降水量は一八〇三ミリメートルで、表日本型の気候区に属する。表日本気候区とは西高東低の冬型気圧配置の時にかならず降水のない地域であるが、鈴木秀夫の定義(鈴木一九六二)によれば表日本気候区のうち局地不連続線のできやすくない地域、すなわち表日本気候区の少雨型(Ⅲb型)に多摩市は相当する。多摩市の月平均気温を、都市中央部に位置する東京と、内陸部にある熊谷、相模湾に面している小田原の三地点と比較してみる(図1―27)。年間を通じて多摩は最も低温であり、東京が高温である。多摩に近い気温傾向であるのは熊谷であるが、内陸の平地にある熊谷のほうが夏には高温となる。多摩と東京の中間の気温が小田原であるが、海に近い小田原は冬には高温となって、東京に近い気温となる(地点はそれぞれの測候所の置かれている場所)。

図1―27 多摩、東京、熊谷、小田原の月別平均気温
(昭和62~平成3年の平均)

 また年降水量は多摩市で一八〇三ミリメートル、東京一六一九ミリメートル、熊谷一四三三ミリメートル、小田原二三一七ミリメートルであって昭和六十二年(一九八七)~平成三年(一九九一)、多摩は太平洋に面した小田原ほど多くはないが、東京、熊谷よりは多い(図1―28)。

図1―28 多摩、東京、熊谷、小田原の月別降水量
(昭和62~平成3年の平均)

 多摩市の風向は複雑な地形を反映して変化に富む。風速は四月に比較的大きく、いずれの季節も午後の最高気温出現時刻のころに最も強く吹く。風速の大きい昼間の風は、冬季には北よりの風であり、夏季には南々西ないし南の風が卓越する。これは乞田川の谷を上り下りする季節風である。ところが夜間には季節を問わず弱い西よりの風が吹く傾向にある。これは高尾山方面からの山風のような、少し広い範囲の日変化する風の存在を考える必要がある。