気温分布を調査する目的は市域内のどの地域が相対的に気温が高いか(あるいは低いか)を知ることである。気温分布を知ることによって市内の気候の差異やその分布特性がわかる。小地域内の気温分布の研究方法は昭和二年(一九二七)ごろから確立されており(Schmidt一九三〇)、これまで小気候学あるいは都市気候学において研究の対象となってきた。その結果都市が周辺郊外より温暖であるというヒートアイランド現象などが発見され、その機構が解明されてきた。多摩市においてもむろんヒートアイランド現象は起こっており、それが複雑な地形の中で、季節、時刻によってどのような形態をとるのかが明らかになった。
多摩市域内の気温分布の観測は車載のサミスター電気温度計を用いた移動観測法によって観測した。観測地点は市内を中心に約七〇地点(図1―32)、一回の観測に要する時間はおよそ五〇分である。典型的な夏の気圧配置であった昭和六十二年(一九八七)八月二十九~三十日と、西高東低の冬の気圧配置であった昭和六十一年(一九八六)十二月二十九~三十日を中心に総計二四回の気温観測を実施した。
図1―32 観測地点