多摩市の降水の特徴

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降水量については一年間の総降水量が気候を知る上で目安となるのは言うまでもないが、同時に月別降水量のパターン、言い替えればどの季節に多くの降水があるか、が重要な点である。また降水量は年によって変動の大きな気候要素であるから、降水量の経年変化を知ることも必要である。
 多摩市の降水量については、大気汚染常時測定室の観測による市役所屋上における記録がある(昭和六十二年(一九八七)~平成三年(一九九一))。五年間の平均降水量は一八〇三・二ミリメートルであるが、降水量の年変動は大きい。例えば観測された五年間の内で十月の降水量の最大値(平成三年)は最小値(昭和六十三年)の一一・六倍となっている(図1―39)。平均すると降水量の最も多い月は九月であり、次いで八月であるが、年によっては十月、十一月に降水量のより多い年もある。すなわち多摩市の降水量に最もおおきな影響を与えるのは台風ないし秋霖前線(秋の長雨)による降水である。

図1―39 多摩市の月別降水量(昭和62(1987)~平成3(1991)年)

 気温の場合と同様な理由から、東京、熊谷、小田原の同期間の降水量と比較する(図1―28)。各地点の年降水量(五年間の平均)はそれぞれ、東京一六一九ミリメートル、熊谷一四三三ミリメートル、小田原二三一七ミリメートルである。内陸部に位置する熊谷は少なく、海岸部の小田原は多い。月別の降水量は各地とも九月前後の台風、秋霖前線期に最多降水量となる。多摩ではこの時期のピークがきわだって現れている。このほかに六月の梅雨時期と三月の前線(菜種梅雨)の降水多量ピークがあって、三つこぶ型となっているが、後者二つのピークが顕著なのは小田原の降水量であり、三つこぶが認められない熊谷と比較すると、前線との距離関係による差異であろうと考えられる。降水量の少ない時期は冬季十二月、一月であって、多摩では年によっては月降水量ゼロを示す場合もある。