風向・風速の変化と特徴

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風向・風速の観測地点はほかの気候要素と同じく、市内愛宕児童館の近くにある愛宕自動監視測定局である。大気汚染常時測定室の記録から、各季節の一カ月間の平均値を用いて、一日の風速の時刻変化を示す(図1―40)。これによれば、いずれの季節も気温の高い日中に風速が大きくなり、深夜から明け方にかけて風速は小さくなる。とりわけ昼すぎの最高気温のころに風速は最大となり、日の出時刻前後の最低気温のころに風速も最小となる。したがって、日の出時刻が早い夏季には七~八時ごろから風速が増加し、二十時ごろに減少するという日変化をする。風速の絶対値は四月に最大となり、次いで一月、七月、十月の順である。

図1―40 多摩市の四季の風速の時刻変化
(昭和51~55年の各季節の時刻別月平均値)

 季節別に風向を表した風配図は『多摩市内大気質調査報告書』から編集して掲げた(図1―41)。この記録は昭和六十二年(一九八七)の各季節に、それぞれ一週間観測を実施し、その結果をまとめたものである。前述の結果より、風速が最大となる昼すぎ、すなわち十三~十六時の風向風速を図に示した。これによれば、冬季は昼、北から北西の風が卓越し、次いでその逆方向の風が次いで多い。また全日の風向を調べると北、北西以外の風向も現れている。これは午前中の風向が変化しやすいことによるものである。春季の昼は南西、北東の風が卓越するが、全日の風向はまったく卓越する風向がない。夏季の昼は南風が卓越し、風速も大きい。全日の風向についても南風が卓越する。秋季の昼には北よりの風が卓越する。全日の風向についても北から北々東の風向が卓越する。

図1―41 多摩市の四季の風配図

 どの季節に、何時ごろ、どんな風向の風が吹いているのだろうか。またそれは年によって変わるものであろうか。風向や風速は気圧配置によって異なり、当地域における季節の風の傾向を知るにはある程度記録の集積したものが望ましい。そこで風向の日変化を一〇年間分並記して比較することとする(図1―42、43)。この図を概観すると季節と時間による風向のおよその特徴がとらえられる。これによれば一月の昼(九時から二十時ごろまで)は北よりの風が卓越し、夜(二十一時ごろから八時まで)は西から北西の風が卓越する。四月の昼(八時ごろから二十一時まで)は西から北西の風が卓越し、夜(二十二時から八時まで)は西から北の風が卓越するが、風向変化が大きい。七月の昼から夜(十時ごろから二十四時ごろまで)は南々西の風が卓越することが多い。夜から朝(一時から七時まで)には西から北の風が吹くが風向変化は大きく、その間風向は時計回りに日変化する。十月の夜(十八時から二十四時まで)は西から北西の風が卓越する。早朝から夕方まで(一時ごろから十八時ごろまで)は北から北西の風が卓越する。

図1―42 多摩市1月の最多風向


図1―43 多摩市7月の最多風向