地形による風の影響

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多摩市域内の風向の分布を市内一〇地点で観測した。その結果を流線図で示す(図1―44、45)。
昭和六十二年(一九八七)八月二十九~三十日の天気場は太平洋西部に中心をもつ高気圧に被われて夏型である。図1―44は八月三十日十七時三十分ごろの地域内の風の流線を示している。乞田川沿いに南から南西の風が多摩川に吹きおろすように卓越する。風が収束する多摩中学校付近の観測点でもっとも大きな風速(毎秒二・〇メートル)を記録した。ただし周辺の地形が複雑なため、多摩サービス補助施設、市の南西端南野三丁目、および愛宕の丘の上など、丘陵地の上では南東の風が卓越する。

図1―44 多摩市内の風向の分布(昭和62年8月30日17時30分)

 昭和六十一年十二月十五日の天気場は前線を伴う低気圧が日本列島の南岸を進み、日本付近は冬型の気圧配置になりつつあるところである。図1―45は昭和六十一年十二月十五日十時ごろの地域内の風の流線を示している。夏季の風向とは逆に多摩川方面から乞田川をさかのぼるように北々東の風が市内に卓越する。八王子側からは地形の影響もあって、愛宕の丘を越えて北風が入ってくる。同様に聖ケ丘でも、尾根状の地形の上では稲城市側から東よりの風が入ってくる。これらは季節による特徴を示す風向であるが、地形による影響を受けた局地的な一面をもった風である。

図1―45 多摩市内の風向の分布(昭和61年12月15日10時)