以下、多摩市の資料・『多摩市の環境保全』にしたがって定点観測地点の水質傾向をみると、BOD(生物化学的酸素要求量・水中の汚物を無害なものにまで分解するため好気性微生物が必要とする酸素の量。その数値が高いほど川は汚れていることになり、一リットル当たり五ミリグラム以下が望ましい)、並びにSS(水中に浮遊している不溶性の物質量。見た目の汚濁程度と最も近い相関をしめす)の減少とDO(溶存酸素・水中にとけている酸素量。飽和量は一リットル当たり八~九ミリグラム。魚介類の生息には通常一リットル当たり五ミリグラム以上が必要とされる)の微増が認められた。結局、稲荷橋地点では環境の汚れを示す主要指標からみるかぎり、いずれの項目とも環境基準を満たしているか、もしくは好転しているといえる(図1―54)。
図1―54 多摩市域の河川水質(BOD)の推移
―永山橋―乞田川のほぼ中央部にあたる当地点は、上流部と同様に護岸、河床ともにコンクリートブロックである。底泥の堆積はみられず、過去八年間の年平均流量は最も少ない年度で毎秒〇・〇六八立方メートル、最も多い年度で毎秒〇・一六立方メートルと年度によるバラツキは少ない。少ないなりに流量の安定した河川といえる。稲荷橋―永山橋間には湧き水があり、都市の生活雑排水の流入がないのに流水量は年度によって稲荷橋の二~六倍に増加している。水質についてみると、汚染の代表的指標のひとつとされるBOD値は、年平均で一リットル当たり一・六~二・九ミリグラムの間にあり、多摩市内の河川・池沼のなかで最も良好な地点であることを示している。良好なBOD値と関連してDOやSSも多摩市内の水域で最も良好な値となっている。
―行幸橋―ここは大栗川合流直前の地点である。護岸はコンクリートブロック、河床は魚巣ブロックと礫が点在する。過去八年間における年平均流量は最も少ない年度で毎秒〇・一〇立方メートル、最も多い年度で毎秒〇・二一立方メートルとなり永山橋の場合とほぼ等しい。水質傾向をみると、永山橋―行幸橋間では生活雑排水の流入がみられ、BODは永山橋よりかなり高い値を示していたが、両者の数値は平成元年度(一九八九)以降急速に接近し、近年では顕著な差は見られなくなった。DOについては各年度とも一リットル当たり一〇ミリグラム以上を示し、これも永山橋の場合と近似しているが、SSは年度によって一リットル当たり三〇ミリグラム(昭和六十三年(一九八八))、同じく六四ミリグラム(平成三年(一九九一))という高い値を示し、経年変化は大きくバラツキをみせている。