多摩市域に発達する丘陵や段丘などの地形は、第四紀時代の前期更新世に堆積した上総層群(連光寺層、稲城層)を基盤としている。丘陵地は地形的に多摩Ⅰ面(T1)に属し、基盤の上総層群中の帯水層は礫層や砂層などで構成され、何層かに分かれている。上総層群の地下水は大略被圧状態にあり、その結果丘陵地を刻む谷底部には自噴しているところもみられる。丘陵の基盤上面には河成作用に伴って堆積した相模層群中の御殿峠礫層が分布し、さらにその上位に新旧の関東ローム層が堆積する。前者の礫層は丘陵頂部における不圧地下水の帯水層となり、礫層の分布しないところでは上総層群の泥質層が難透水層となり、その上部の関東ローム層下部に不圧地下水の存在がみられる。こうした多摩丘陵の地質は比較的複雑な様相を呈しているため、丘陵地における地下水の在り方は必ずしも一様でない。
多摩市域の段丘は地形とその構成層によって上位と下位に大別することができ、その分布は丘陵斜面下部から大栗川と乞田川沿岸低地の間に存在する。特に大栗川右岸に発達する上位段丘は多摩市域において最も広い面積を有し、東寺方~落川~和田南部にかけて分布する。また、乞田川最下流右岸には小規模ながら上位段丘の発達をみるが、そのほかの地域では顕著な段丘の分布をみない。これら段丘の構成層は基盤の上総層群上部に相模層群の相当層と新期ローム層によって覆われている。段丘の帯水層は段丘礫層~関東ローム層で、ここでは不圧地下水を形成している。
こうした丘陵や段丘の浅層に存在する不圧地下水は、降水によって涵養され、表層の新期ローム層を通じて下位の相模層群中の御殿峠礫層(段丘礫層)あるいは未固結の砂層に帯水する。このうち一部の地下水は上総層群の泥層との地層境界から湧水として流出し、河川水を涵養している。さらに降水の一部は泥層の亀裂などを伝わってより下位の地層へと浸透し、被圧地下水となる。
市域の低地は多摩川とその支流の大栗川、乞田川沿岸の沖積地であるが、さらに丘陵・段丘を侵食して発達する小規模な樹枝状の谷戸地がある。これら低地の地下水は降水に伴う表面流出水や湧水などによって養われて、地下水位の浅い状態を形成し、一部には湿地化するところもある。不圧地下水の帯水層は当然ながら未固結の沖積層であり、ここでの地下水は河川水と交流関係にある。しかし、現在の市域は多摩ニュータウンの造成などにより都市化現象の進展が著しく、その結果として地下水の在り方などに大きな影響が認められている。